BECAUSE...




わし、悪くないよのぅ?
あいつが勝手に怒って出て行ったけぇ
そりゃあ、内緒であんな店に行ったのは悪かった...けど...
けど...分かったら怒るじゃろと思ったか..ら...
...やっぱり、わしが悪かったのかのぅ...?

それにしても!
もう1週間以上経つのになんで連絡して来んのじゃ?
いつもだったら2〜3日もすれば
何もなかったようにわしの家で晩飯作って待ってるはず..ってああ...そうか
こないだ鍵をわしに投げ付けて帰ったんじゃった...
仕方ないのぅ〜メールでもしてみるかぁ



今近所で飲んでるんだけど
暇だったら一緒に飲まん?
...別に無理に来なくてもええけど

晴一



な、何なの?!
このものすごく普通なメールはっ
これじゃあ...これじゃあ...
ずっと悩んでた私がバカみたいじゃない ...

ブツブツ言いつつも
身支度を整えていつも2人で行っていた店に向かう
店に着くといつもの席でいつもと変わりなく1人で飲んでいる晴一が...


おっ、来たみたいじゃの
あれっ?あいついつもはコンタクトなのに
なんで今日は眼鏡なんかかけとるんじゃ?


「よぅ。久しぶり」
「…久しぶり」
「元気そうじゃん、てっきり毎日泣いてると思っとったのに」

…なんかやつれたみたいじゃの

「そんな訳ないじゃない。。。」

…そうよ、毎日泣いていたわよ

「今日はコンタクトじゃないん?」

…さっきから俯いたままじゃけど...

「うん、ちょっと目の調子が悪くて...」

…泣きはらしてコンタクトが入れられないなんて言えないわ

「ふ〜ん」
「そういう晴一こそ元気そうじゃない。かわいい女の子と楽しくやってるの?」

…こんな事言いたいんじゃないのに...

「おう、毎日楽しくってのぅ」

…あの日からそんな店には行っとらんのに、わし何言うとんじゃろ?

「そう...楽しそうで良かった。」

…あなたの言葉の刃が私の心を引き裂いて
……心は血を流し続ける
………もう...

「もう、私がいなくても全然大丈夫だね」

…全てがいやんなっちゃった

「え?」

…こいつ何を言ってる?

「私がいなくても晴一は何も変わらない。
やっぱり若い子の方が遊んでて楽しいもんね。
わたしなんかといるよりずっと...ずっと...」

…もう終わらせてしまおう

「このリングも返すね。さよなら」


そう言い残すと私は店を後にした
涙を彼に見られないようにして...

「俊美...」


店を出た後行くあてもなく町を歩き回り
気がつくと晴一の部屋の前に立っていた私...
何度もインターホンに指を伸ばしては引っ込めるのをくり返して...

「今さら合わせる顔なんてないよね」

結局インターホンを押す事のないまま家に戻って...
ドアを開けると同時に

「遅かったの〜。ここのお嬢さんはこんな時間までどこに行っとったんかのぅ」
「は、晴一?!どうして私の部屋にいるの?!」
「どうしてって...わし、お前の部屋の合い鍵持ってるし」
「そ、そうだった..ってそういう意味じゃなくて!」

玄関に立っていたのは晴一
驚いてしどろもどろになっている私を見つめてる
その視線に耐えられずについ俯いてしまう

「のぅ?俊美」
「..何?」
「どうしてこっちを見んの?」

ふいに眼鏡を取られて慌てて顔を上げると晴一とまともに視線が合った
目をそらしたいのにそらせない

「こ〜んな瞼を腫らしてもうて...どんだけ泣いとったんじゃ?」
「...」
「ほんっとにお前ってバカじゃのぅ。他の子の事なんて気にして」
「だって...」
「まあ、バカなのはわしもじゃけど」
「え?」
「俊美がそんなに気にしていたのに、わし全然気付いてなかった
俊美が傷付いているのに気付いてなかった...だからお互い様じゃ」

晴一の言葉を聞いているうちに
涙がぽろぽろ出てきて止まらなくなってしまって
晴一はそんな私を抱き寄せて優しく髪を撫でてくれて

「よしよし、落ち着いてきたかのぅ?」
「うん...ごめん」
「落ち着いて来たみたいじゃの?それじゃあ頼みがあるんじゃけど...」
「...?何?」
「久しぶりに俊美の入れたコーヒー飲みたいんじゃけど?」

と照れくさそうな声

「いいよ...でも...」
「でも?」
「もう少しこのままでいてもいい?もう少し晴一の温もりを感じていたいの」

晴一に抱かれながらさっきまでくり返していた疑問の答えを心の中でつぶやいていた

…どうしてあんな事をやってしまったのか?

………なぜなら晴一が大好きだから

















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