Indian summer

 

「のぅ?乃亜」
「なぁに?ハルイチくん」
「ちょっと出かけてみん?」

いつも休みの日も自分の趣味優先なハルイチくん
ハルイチくんが芸能人というのもあって
2人で出かける事なんてなかなかない

「え〜っ、珍しい〜。雨でも降るんじゃない?」

そう私が返すとハルイチくんはむすっとした表情で

「雨が降るのはライブの時だけで充分。乃亜が出かけたくないんだったらええんじゃけど?」
「ええっ、行くっ!行くに決まってるじゃない!ちょっと準備するから待ってて」
「いや、そのままのカッコでいいんじゃけど」
「だって、これ普段着よ?」
「わかっとぅよ。そんな遠出する訳じゃないからそのままでええって」
「そう..なの?」
「そうなの」

2人で来たのは午後遅くの人気のあまりない近所の公園
今まで気がついてなかったけど、ここって思っていたより広いんだ
その公園の落葉の敷き詰められた道を歩いている
小春日和の公園を一緒に歩いていると
微妙な距離を取っている自分が変に思えてきて
そっとハルイチくんに寄り添ってみた。
ハルイチくんが嫌がったらどうしよう?とちょっと心配だったけど
別に嫌がったりする事もなく、以前からこうだったように普通に歩いてる
それじゃあ、とちょっとだけ大胆さと勇気を出して
ハルイチくんの手に私の手を添えてみた
...手を振りほどかれたらどうしよう?

おそるおそる絡めた指
優しく握り返してくる手
それまで、胸の奥につかえていたものが解けていく

黙って公園の日溜まりの中を歩くうちに
日も傾いてきて昼の明るい日射しから黄昏の優しい日射しに変わって行く
そして2人で日溜まりの中に佇んでいるベンチに並んで座って
久しぶりに口を開く

「ねぇ?ハルイチくん」
「ん?なん?」
「こんな風に2人で歩くって初めてじゃない?」
「ん〜そうかのぅ?」
「そうだよぅ」
「ん〜...何となく今日は乃亜とこうして一緒に歩いて見たくなったんよ
...気にいらんかった?」
「...ううん...うれしかった..」
「...10年後もこうして2人で一緒にいれたらええのぅ」
「そうだね」

「さて、と」
ハルイチくんは立ち上がって
「そろそろ帰ろうか」
と私に手を差し出した

 

手を握りしめて私は心の中でつぶやく

 

「...ずっとずっと一緒にいようね」

 

 

 

 

 

 

 



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