「君じゃないとさ」

 

いつからだろう...

昔から私は背の高い人に会うと尻込みしてしまう
理由はもうはっきりとは覚えてないけど
多分幼い頃に背の高い男の子にこっぴどくいじめられたんじゃないかな、とも思う

だからって訳でもないと思いたいんだけど
背の高い男の人に会うと気後れしてしまって近付くのもままならない
ましてや、背の高い人を好きになるなんてありえないと思っていた

そんな私だったけど...

 

「なぁ?すず」

そんな私に手を差し伸べてくれたのが晴一君

「ちょっとは緊張しなくなった?」
「...うん。大丈夫」
「ダメじゃのぅ。まだまだ固いっ!でもましになったかのぅ?
最初はほんっとにガチガチでな〜んもしゃべらんかったもんな」
「そう..だったかな?」
「そうそう、『わし、なんもせんよ?』って思ったもん」
「そんなに私おびえてたっけ?」
「おびえてるって言うか...固まっとったよ」
「そうだった?」
「覚えとらんの?」
「う〜ん...覚えてない」
「ひっどいのぅ...わし、必死で話し掛けとったんに」

照れくさくて忘れている振りはしたけど
私自身も晴一君に初めて声をかけられた時の事は覚えている
固くなって言葉を口にする事も出来ない私に
一生懸命話し掛けてくれたんだっけ...

「そういえば」
「ん?」
「どうして、また私に会おうなんて思ったの?普通は二度と会う気にならないと思うんだけど」

そう問いかけると困ったように唇を尖らせて

「なんでって聞かれても...なんでかのぅ
う〜ん...なんか『わしが何とかせなっ』って思ったんよ」
「そ、そうなの?」
「そうなん。感謝してくれやぁ」
「そう..ね。晴一君のおかげで前ほど背の高い人が苦手じゃなくなったもんね
...ありがとう」
「そうそう、わしじゃなけりゃ〜出来んよ?」

そして心の中でもう一言付け足す

「すずでなかったら...わしもあれ程はしなかったけどね」

 

 

─そう、君じゃないとさ..

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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