「grass」

 

 

「えっ?!うそっ!」

友人からのメールに思わず声をあげる
なんだか、ややこしい事はわからないんだけど(とメールに書いてある)
私の通っている高校が臨時休校になったらしい
もう少し早くわかったら...もう学校の近くまで来ちゃったよ...
家に帰るのもめんどくさいし、どうしようかな?
...そうだ!

...ふふふ、来ちゃった
確か前にここでクロゴスの練習してるって昭仁さんが言ってたもんね
今日は久しぶりの練習だって言ってたんだよね
あ〜〜っ!あのランニングしているのがそうかな?
もうちょっと近くに行っても大丈夫だよね?
あっ、みんなでキャッチボール始めた
昭仁さんと組んでるのは...晴一さん?

あ〜今日は天気もいいし気持ちいいな〜
風が気持ちいい〜〜〜
昭仁さん達もこんな気持ちいい日に練習出来てうれしそう
なんだか子供みたいでかわいいな..ふふふ

 

「...のう?昭仁」
「...ん?」
「さっきからさぁ、ギャラリーが1人おるんじゃけど...よっ」
「...ギャラリーって、そんな珍しくもないじゃん?なんか気になるん?」
「まあ、大した事ないんじゃけ...うわっ!しまった」

 

それにしても
今日は天気が良くてほんっとによかった〜
昭仁さんって自分が雨男だからって気にしてるもんね
さぁ!昭仁さんの練習しているとこも見られたし
ずっと居たら怪しまれそうだから、そろそろ行こうかな..

「うわっ!しまった!」

え?なに?
と顔を上げてみると
見えたのは こっちに向かって飛んで来るボール

「きゃぁぁ!」

反射的に頭を抱えこんだ私の横にボールは飛んできた
...あ、危なかった...

「すんません!怪我はありませんか?...?!沙紀ちゃん?!なんでここにおるん?!学校は?」
「あ、あの..急に休校になって...昭仁さんがクロゴスで練習してるのがどうしても見たくなって...あの..ごめんなさいっ」
「いや、責めている訳じゃないんよ?ちょっとびっくりしただけで...」
「おーい。昭仁何しとん?」

なかなか帰って来ない昭仁さんの様子が気になったのか
晴一さんまでこっちにやって来た..どうしよう...

「君、怪我はないかな?大丈夫?」
「あ、はいっ!大丈夫です!」

で、舞い上がってしまった私はうっかり口走ってしまった

「あ、あのっ!ポルノいつも応援しています!」
「あぁ、ありがとう...」

と、曖昧な笑みを浮かべている晴一さんの横でえっ?と驚いた表情の昭仁さん...
しまった...ファンなの内緒にしてたのに...

「ちょ、ちょっと沙紀ちゃん?確か、『ポルノにはそんなに興味ないよ』って言ってたんじゃ?」
「ごめんなさい!ホントは大ファンだったの!でも、でもね。他のファンの女の子と一緒と思われたくなくて。それで...」
「わ、分かったから泣かないで...困ったな」
「...岡野くん?」
「うわっ!晴一?!」
「どうもキミらの様子を見るに、この子はキミの彼女のような気がするのだが?わしの気のせいかな?」
「...ばれた?」
「彼女な訳やね?」
「...ハイ」

昭仁さんの返事を聞いた晴一さんは人の悪そうな笑みを浮かべて

「そ〜んじゃあ、せっかくじゃけぇ、彼女をみんなに紹介...」
「え〜〜〜っ」
「...は、今日は勘弁してやろう。みんなには上手く言っとくけぇ。彼女を送っていけや。」
「さ、サンキュ」
「その代わり...わしがなんかあった時には頼むで」
「お、おう」
「じゃあな...と、言い忘れとった」

向こうに行きかけた晴一さんは引き返してきて一言

「こっの〜犯罪者め〜」

と言い残していった
昭仁さんは咳払いをしてこちらを向いて

「さっ..いこか」
「...うん。ごめんね」
「なんも謝る事ないって。」
「だって、隠し事してたし。」
「ま、びっくりはしたけど。『他の子と一緒に思われたくない』なんて気にせんでもええのに。沙紀ちゃんは沙紀ちゃん。他の誰ともくらべられんのよ」

そう言って優しく背中に手を回してくれた

「ハグは...みんなに見えない所まで行ってからね」

 

 

 

 

 

 

 



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