ア・キ・オ

 

私がアキオに見つけたのは雨の降る夜の事でした
うらぶれた小さな路地に倒れていたのです

アキオは天使だったのです

恐らく地上の瘴気にあたって落ちて来たのでしょう
翼は折れ地上の汚れに染まっていたその姿は
まるで巣から落ちた雛鳥のようでした

アキオを連れて帰ったのは
一目見た瞬間に惹き付けられてしまったからでしょう
そう...
私はアキオを愛してしまったのです

 

ココハドコ?
ワタシハナゼコンナトコロニ?

目が覚めると見知らぬ部屋にいたのです
確か...私は...
と、これまでの記憶が全くない事に愕然としたのです
覚えているのは自らの名前だけでした

そこにあの人が入ってきました
少しおどおどしながら私に問いかけて来たのです
あなたはなんと言う名前なのですか?
あなたは天使なのですか?

私の名前はアキオ
天使なのかどうかは...わからない
けれど背中に生えている羽根が天使の証であるのなら天使なのかもしれない

あの人は私にとても優しく接してくれました
羽の傷も手当してくれたし
私に対してそれは愛情深く接してくれました
そう、あの人は私を愛してくれていたと...思います

あの人は何度も私に言いました
アキオ...愛しています...
私はあの人の愛情に包まれて暮らしていました
やがてそれは...

私を閉じ込める目に見えない枷に変わっていきました
まるで鳥篭のように
私は鳥篭の中に閉じ込められた鳥のようなものなのです

いつしか私は
すべての物から自由になりたいと思うようになりました
たとえそれが私を包む愛だとしても

あの人は私を愛しているのか?
それとも「天使」を愛しているのか?
解らなくなって来たのも自由になってみたい理由の一つだったのかもしれません

私が天使でなくなったとしても
あの人は私を愛し続けるのでしょうか?
それとも...その時こ愛情の枷を外す事ができるのでしょうか?
しだいに私はそれを試したくなってきました
私は自由を求めていたのでしょうか?
それともあの人の愛を試したかったのでしょうか?

私を天使たらしめているものさえ無くなれば、と
私は自らの翼に手を掛けて..

 

いつものようにアキオの部屋に入っていくと
そこには千切られた翼と...アキオが...

 

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