「TAKE IT EASY」

 

 

バイクは嫌い

騒々しいし、危ないじゃない
昔から実家の近くを暴走している輩を見る度に苦々しく思ってた
あんなのに乗る人の気が知れないっていつも言っていたんだけど…

イベントのパンフの撮影以来なんだか様子が変だと思ってはいた
妙に早起きしていそいそとどこかに出かけているみたいだったから
何を企んでいるのかしら?と思っていたところへ...
ラジオでの報告
更にはブログでの大型バイクの免許を取ったって報告が...
本当にびっくりしたし、腹もたった

そりゃあ、普段から「バイクは嫌い」って言っていたから
言い出しにくかったと思うけど..けど!
直接じゃなくてラジオやブログで報告なんて!
一言位言ってくれていてもいいじゃない?

こないだ会った時に、その事で文句を言おうと思っていたのだけど
会った途端に目をキラキラさせながらバイクの魅力を語る晴一を見ると
文句を言う気もなくなって
この間初めてツーリングに行った時の話を聞いていた
風をきって走る爽快さ
体いっぱいに直に感じる海や山の香り

「ええよ〜ツーリング!すずもバイクに乗ったらわかるって!なぁ、すずも免許とらん?」
「嫌よ。前からバイクは嫌いって言ってるじゃない」
「え〜っ、乗ろうやぁ〜」

不満げに口を尖らせる晴一
でも、嫌いなものはしょうがないじゃない?

こんなやり取りをしてから何日後か
レコーディングも一段落ついてやっと休暇が取れたというので
今日は久しぶりに会う事になった

迎えに来てくれると言うので
家の近くのコンビニの駐車場で晴一が来るのを待っていると
遠くからバイクのエンジンの音が...
うるさいな...

ん?

バイク?

まさか...

1台の大型バイク..ハーレーって言うの?
それが駐車場に入って私の目の前に止まると

「すず、おっはよ〜」

黒いヘルメットを脱いで笑いかけてきたのは晴一だった

「ちょっ...バイクになんて乗ってきてどうするつもりなの?」
「『どうする』って、ツーリングに決まっとろ?ほれ、これをかぶって」
「かぶってって...きゃっ!何するのよ!」

魔法のように、もう一つのヘルメットを取り出すと私の頭にすっぽりとかぶせた

「しっかり留めとかんといかんよ?じゃあ、ここに座って」
「だから...」
「ジーパン履いて来てて丁度よかったのぅ。」
「もうっ!仕方ないわねっ」

しぶしぶバイクの座席に跨がると前にいる晴一の体におそるおそるといった感じで腕を回した

「そんなんじゃあ危ないけぇ、もっとギュッと力を入れて」
「こ、こう?」
「う〜ん、そんなもんかのぅ。じゃあ、出発するで!」

風を切って走って行くハーレー
どんどん流れていく風景
やがて、ビルだらけの町中を抜けて緑が増えてくる
それにつれて空気の匂いも排気ガス臭い都会の空気から土と緑の香りに変わってくる
やがて海が見えてきた時には風を切って走っている爽快感も相まって最高な気分だった

どれだけの時間走ったのか
潮の香りの漂う海辺に辿り着いてようやくハーレーは止まった

「どうじゃった?楽しかったじゃろ?」
「ふ..ふん。悪くなかったわ...よ」
「素直じゃないのぅ。ホントは楽しかったくせに〜」
「ち、ちょっと楽しかった。かな」
「じゃろ?」
「バイクは好きじゃないけど...晴一と一緒だったらまた行きたいな」

 

 

 

 



アクセス解析 SEO/SEO対策