想い

 

 

「じゃあ、そろそろ行くわ」

「うん...ねぇ、新藤くん」

「ん?何ね?」

「あ...ううん、何でもない」

新藤くんとつき合い始めてからもう3ヶ月
でもデートしたのは数える程
東京からは私の住んでいる所は余りにも遠くて...

「な〜に考えとん?」

 

「な〜に考えとん?」

無口になった涼子が気になって顔を覗き込んだ
涼子はいつも俺の帰る時間が近付くと元気がなくなるんじゃ
本当は何を考えているかわかっとるんよ
それは...

「.....いで...」

 

「いかないで...」
「もう少し..もう少しでいいから側にいて...」

思わず口からこぼれ出た言葉
今までずっと心の奥にしまい込んでいた想い

ハナレタクナイ...ズットイッショニイタイ...

こんな事言ったら新藤くんが困るの分かっているのに
我がまま言っちゃいけないよ...ね

「ごめんなさい...我がまま言って。忙しいのわかってるのに」

言葉と一緒に涙がこぼれた
止めようとすればする程止まらない涙...
まるで今まで仕舞い込んでいた想いがこぼれているようで...

「ごめんなさい...」

 

「ごめんなさい...」

涙をぽろぽろこぼしながら謝る涼子
愛おしさがこみ上げて来て涼子を抱き寄せた

ハナレタクナイ...ズットソバニイタイ...

「俺も...」

 

「俺も出来る事なら涼子のそばにいてやりたい..でも」

 

「でも...無理だよ、ね」

「涼子...ごめん」

「ううん、最初から分かっている事だもん...」

 

「今度は...いつ会えるんだっけ?」

「もう...忘れたの?」

「...ん〜...いつじゃったかの?」

「クリスマス、だよ」

 

抱き合う恋人達の上に
今年初めての雪が
優しく包み込むように降りそそぐ...

 

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