Addicted to sound

 

タマくんの家のドアを開けた途端
トランペットの音色に迎えられた
ありゃ
またタマくん新しいフレーズでも思い付いたかな?

「タマくん♪」

呼び掛けても気付く様子がない。。。
夢中でトランペットを吹いては「う〜ん。。」なんて唸ってる

「タマくん!」

今度は少し大きな声で呼び掛けると
びっくりしたようにこっちを見た。。。ホントに気が付いてなかったみたい

「あ...きとったん?」

「きとったん?じゃないよっ。もう〜こんな散らかして〜」

なんて言いながら床に散らばった五線譜を拾い上げようとすると

「ち、ちょっと待って!ストップ!多恵ちゃん!」

「????何?」

「わしが自分で拾うから!多恵ちゃんはお茶でも入れててくれん?」

「...いいけど...」

最近のタマくんってな〜んかおかしい...
いつもだったら私が横でタマくんが楽器を弾いているのを見ていても
なんにも言わないのに
この2週間ぐらい私が横で聴くのを避けているみたい..どうして?

お茶を飲んでからしばらくして
タマくんが言いにくそうに

「多恵ちゃん。。。今日はもうかえって貰ってもええかなぁ?」

「え?どうして?」

「う...う..ちょっと..ごめん!ほんっとごめん!今度はゆっくりしていってもらうから!」

「...じゃあ、今日は帰るね」

 

どうしたんだろ?タマくん
私と音楽とどちらが大事なのか最近わかんないや
...でも
そんな音楽の大好きな、音楽しか頭の中にないタマくんが好きなんだもんね
音楽が相手じゃあ嫉妬のしようもないし...

 

1週間後
タマくんから呼び出されて久しぶりにタマくんの部屋へ
いつもの様にドアを開けると
そこには心持ち得意げな顔をしたタマくん

「さっ、こっちに座って、座って」

と私をソファに座らせるとトランペットを取り上げて曲を奏で始めた
..それは今までに聴いた事のない曲だったけど
とても優しくて暖かさを感じて...
聴いているうちに涙が出て来た
やがて曲が終わって...

「どうじゃった?この曲?」

「うん...良かった...すごく良かった...なんて曲なの?」

「まだ曲名はないんじゃけど」

「えっ?」

「実は..これ多恵ちゃんへのプレゼントなんよ」

「ええっ?!」

そう言えば...もうすぐ私の誕生日だった...

「多恵ちゃんへ一番わしらしいプレゼントをしよう、と思って一生懸命考えたんじゃけど...気にいって貰えたかな?」

「も...もちろん!ありがとう、タマくん」

「良かった〜後は曲名じゃの。多恵ちゃん決めてくれる?」

「え...そ、それじゃあ...この曲の曲名は..」

 

...2人だけの秘密だよ...

 

 

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