冷たい炎


この季節にしては珍しくひどい雨
まるで嵐のよう
こんな荒れた天気の夜は1人だと心細いな
アキヒトに来てもらおうか?どうしようか?
「な〜に言うとん?子供みたいな事ゆうて〜」
って笑われるかな〜


と、その時
急に玄関のドアが開く音が
(え?誰?...アキヒト?..ま、まさか泥棒?)
恐る恐る玄関まで行くとそこには全身雨でずぶ濡れのアキヒトが立っていた

「アキヒト!こんな時間にどう...んっ!?」

声をかけようとした時
突然荒々しくアキヒトは私を抱き寄せて強く口づけた
混乱する私の頬に雨とは違う暖かい物がふれる
(...涙?)

ようやく唇を離すと
落ち着いてきた様子のアキヒトに話し掛ける

「アキヒト...どうしたの?何があったの?」

「う...ん...わしさぁ
葉がわしから離れて行ってしまう夢を見たんよ
それがあんまりにもリアルでのぅ
葉がいなくなってしまうと考えただけで悲しくて寂しくて
どうしても葉の顔を見ずにはいられなくて
夢中で葉の家まで来てしまったんよ 」

「それで...泣いてたの?」

「え?...わし、泣いてた?」

アキヒトはそこで初めて自分が泣いていた事に気が付いたみたいで
照れたように笑いながら

「それだけ葉がいなくなったら悲しいって事じゃ」

と言うと再び私を抱きすくめようとした

「ちょっと...ちょっと待って!」

「何?」

「濡れたままじゃ風邪ひくよ。着替え用意しとくからお風呂に入って」

「なぁ、葉...今日泊まっても..いいかな?」

さっきのちょっとした告白と
普段のアキヒトとは違った心細げな姿に愛おしさがこみあげてくる
でもすこ〜しだけいたずら心が頭をもたげてきて

「う〜ん...どうしようかな〜?」

とわざと迷ったふりをしてみたりして

「え...っ、ダメなん?」

「うそよ。泊まっていいって!さぁ、お風呂もわいたから入って」


お風呂からあがってやっと人心地ついたみたい
でも着替のスウェットが気になるみたい
仕方ないか...うちで一番大きなサイズの服だったんだけど
やっぱりきつかったのね

「のぅ、葉...」
「何?...ってアキヒトっちょっと?!ダメったらっ」
「何がダメって?」
「あ..ん、もう..」
「葉...わしの側から離れんといてくれ...」



体を重ねるとさっきまでとは別人のよう
彼の動きに私は木の葉の様に翻弄される

彼はまるで冷たい炎
冷たく...そして熱く燃える
私はその炎に燃やし尽くされてゆく...
やがて暗闇に溶けてゆくまで...


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