注)このお話は「堕天使の羽根」の続編になります
  まずはこちらをお読みくださいまし〜☆

 

「Angel or Trickster?」

 

男の背中には純白の羽根が生えていた
その姿は向こう側が透けて見えるのを考えなければ
まるで、天使のように美しい姿をしていた
...いや、天使のように、と言うのは間違っているだろう
なぜなら、彼は天使なのだから

「一歩遅かったか...」

拾い上げた黒い羽根を眉を顰めて見つめながら呟く
そして、辺りの様子を伺うように周りを見渡す

「この血痕は...彼女の宿主のものですかね?
さっそく無茶な事をやらかしたのでは? まったく、あの人は...」

ため息まじりに呟く

「彼女が宿主を見つけてしまったのだったら、このままの姿では彼女を捕捉できませんね。気は進みませんが...私も宿主を探す事にしましょう」

そして、彼は羽根を羽ばたかせてその場からとび去った

 

 

「ふぅ...疲れた...」

疲れきった体をベッドの上に投げ出す
今まで築いてきた自分の地位を全て投げ出して
自分を知るもののいないこの街に流れ着いた
今日も1日仕事を求めて街中を歩き回って帰ってきた所だった

「簡単には見つからないか...甘くないよな」

と、その時
何かの気配を感じてフッと窓の方を見ると...

白い服を身にまとい、背中から羽根の生えた男が立っていた

「へっ?!い、いつの間に俺の部屋に入って来たんだ?!
...つか透けてる?!ちょっ、この部屋に幽霊が出るなんて聞いてないぞ!」

混乱する彼をしり目に
その男は値踏みをするように彼をじろじろと見て、やがて...

「ふむ...合格、かな」
「はぁっ?!合格って何が?ってかお前一体誰だよ?!」
「私?私は...検察天使だが?」
「ケンサツテンシ?なんだ?そりゃ?」
「そんな事はどうでもいい。
それより、ものは相談なんだが...君の体をしばらく拝借したいのだが?」
「え?は?はぁっ?!俺の体を?な、何言ってんの?訳わかんね〜」

頭を抱える彼を見下ろしつつ男は言葉を続ける

「もちろん、礼はしよう。そうですね...
あなたの抱えているその記憶を完全に消してしまう。と言うのはどうでしょう?
忘れようにも忘れられないその記憶を...」

男の言葉を聞いて彼は驚いた様子で顔を上げた

「なんでそんな事まで...!って..そ、そんな事出来るのか?」
「信じる、信じないはあなたの自由ですが?それから記憶を消すのは私の目的がかなってからになりますが?」
「あんたの存在自体がホントの事言うと信じられないんだけど...
でも...ホントに...ホントにあの記憶を消す事が出来るのなら...
俺の体なんていくらでも貸してやるよ」
「ほぅ、それなら話は早い。では、しばらくお借りしますよ」

そう言うと男は彼の方に歩み寄り...
彼の中に吸い込まれるように消えた

「ふむ。なかなか悪くないですね。ちょっとばかし、栄養状態が悪いようですが...酒ばかり飲んでいるんですか?ちゃんとしたものも食べて下さい」
(な、なんで体を貸して説教されないといけないんだよ!ほっといてくれ)
「いえいえ、しばらくは私の体でもありますから。もっと大事に使わないと」
(ううう...)
「すぐに探索に出かけたい所ですが、肉体が疲労しきってますね。これでは、いざと言う時に力が出せません。
まずは食事と睡眠を取ってからにしましょうか」
(はぁ...好きにしろ)

朝になり
久しぶりに夢にうなされる事なく目を覚ました彼
十分な食事と睡眠でいつになく体の調子もよい気がする
目覚ましにシャワーを浴びて、服を身にまとい....

(って、なんで黒スーツなんだ?)
「..いけませんか?一度着てみたかったのですが?」
(..いや、別にかまわないけど...)
「...?」

も、もしかして... こいつ案外かわいい性格かも...
と内心ニヤニヤしている彼

「...何か言いたい事でも?」
(いや...黒スーツなんて着たら天使って言うよりペテンs..)
「な・に・か?」
(...何でもありませんです...)
「では、そろそろ出かけましょうか」
(え?でもどうやって探すつもり...?)
「これが導いてくれます」

そう言って取り出したのは昨日道で拾い上げた黒い羽根

(...?それは?)
「私達が今から追跡する標的ですよ。えっと...君の事は何と呼べばよいのかな?」
(俺?...ハルと呼んでくれ)
「分りました。私の事はウリエルと呼んで下さい。よろしく、ハル君」
(よ、よろしく)
「では、出かけましょうか」

外に出て空を見上げ
手の中で黒い羽根をもてあそびながら男は呟いた

「遅れをとりましたが...逃がしませんよ。ルイ」

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