僕にできる事

 


ひょんな事から会うようになった2人
お互いの仕事の合間を縫っては一緒に話をしたりご飯を食べにいったり
2人の間柄は”友人以上恋人未満”
もどかしさを感じつつも一緒にいる心地よさを手放したくなくて
それ以上は踏み込めなかったアキヒト
「まあ、ゆかには彼氏もおるしのぅ。わしにぐじゃぐじゃ言われても困るじゃろうし」
そんな中途半端な関係を続けていたある日…

「よぉ、ゆか...?な〜んか元気ないのぅ。どうしたんじゃ?」
「...何でもないの...」
「何でもない事はなかろ?なんかあったん違うんか?」

そう言いながらゆかさんの方を見ると
ゆかさんの 目に涙が一杯にたまっていて驚くアキヒト

「別れちゃった...」
「え...っ?」
「彼と...別れちゃった」

その言葉と同時に泣き出すゆかさん
落ち着かせて話を聞くと...
2、3日前に今まで付き合っていた彼と別れてしまったゆかさん
それから必死で忘れようとしているのですが
どうしても吹っ切れなくて...悲しくて...
それでも涙をこらえていたのですが
アキヒトくんの顔を見たらそれまで堪えていたものが一度に吹き出てきて
涙が止まらなくなってしまったのです

泣きじゃくるゆかさんの背中をさすり続ける事しか出来ない自分がもどかしく感じるアキヒトくん

(こんなにゆかが傷付いているのにわしは何もしてやれんなんてもどかしいのぅ...
わしにできる事はないんじゃろうか...何か..)

 

その出来事から数日後
アキヒトくんから呼び出されたゆかさん

「...こないだはごめんなさい」
「ああ、気にせんでええよ」
「あの..今日はどうしたの?」
「え、っと。これ...読んでみてくれるかの?」

そう言いながら1枚の紙を差し出すアキヒト
何回も書き直した後があるその紙には詩らしきものが書いてあります
その詩とは..

キミに降り注ぐ 辛さや悲しみも
僕が受け止めてあげよう
太陽のような暖かい笑顔を見ていたいから
泣きたい時は 僕の胸で泣いていいよ
いつか涙が乾いたときに
最高の微笑をこの哀れな男に・・・

 

読みながら涙がポロポロと流れてきたゆかさん
読み終わってアキヒトの方を物問いたげに見つめている
アキヒトはちょっと恥ずかしげに頭をかきながら

「これ...まだ書きかけなんじゃけど
今のわしの気持ちなんよ
傷付いたゆかに何も出来なんだ自分が歯がゆくての
何かわしにできる事はないか。って考えて
今のわしに出来る事...詩を書いてみたんよ。
今は考えられないと思うけど
いつか...
いつか心の傷が癒えた時に
わしの事も...考えて貰ってもいいかな?」

 

「...ねぇ、昭仁。あの頃の事覚えてる?」
「.....」
「あ、寝ちゃったのかな?...ふふっ
あのね...昭仁の書いてくれた詩のおかげで
私、立ち直れたんだよ...ありがとう」

こたつで座ったまま眠り込んでしまったアキヒトくんに
かける物を探しに行ったゆかさん
ゆかさんには聞こえなかったけれど
目を瞑ったままのアキヒトくんが小さく呟いてました

「どういたしまして...わしの方こそ『ありがとう』じゃけぇ...」

 

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